規制緩和の悪影響は博物館にも
軽井沢のスキーバス事故。
規制緩和の影響による過度なコストカットが指摘されていますが、悪影響が出ているのは観光バスだけではありません。
人が死ぬわけではないのでまず報道されません。ご存じの方は少ないかと。
しかし、この場合も例に漏れず、コストカットのしわよせで不利益を被るのは弱者(若者)です。
行政主導のコストカットの内容
例えば神戸市の某科学館の場合、
- 科学館に市の職員はいません。
- 数年ごとに指定管理者を公募します。
- 運悪く管理者が入れ替わった場合は科学館の運営がすべて初期化されます。つまり、蓄積したノウハウもすべて失われます。
- 都度、指定管理者の裁量で非正規雇用の職員を募集しますが、待遇が悪い(雇用が不安定なうえに給料が安い)ので専門的な知識を持った人材(教員経験者や研究者、エンジニア)はまず集まりません。
- 行政のPDCAサイクルは形だけです。条例で定められた事業が出来なくても容認しています。コストがかかるので避けているのでしょう。
- コスト削減のため行政の事業評価では主に入館者数と重大クレームの有無を評価基準としているようです。事業内容は精査しません。
- 予算で作った人工物も基本的にその有効性を評価しません。リニューアルすればokという基準なようです。
どうなるか?
- 指定管理者の正規職員(文系)が科学館の事業運営の決定権をもつようになります。
- 指定管理者は事業内容よりも入館者数を増やすことに注力するようになります。(施設が老朽化していても集客の影響を受けにくい小学校低学年までの児童の集客を優先します)
- 遊園地のようなアトラクションが増えます。
- アトラクションの列を整理する人はいますが、展示物を解説できる人がいません。
- ステレオタイプなイベントを外部の専門家に外注するようになるので、ノウハウが蓄積されません。
- 入館料に見合わない、子供だましだと思った人は行きませんので、科学館としての体をなしていなくとも重大クレームが発生することはありません。
- 中高生の理科離れを防止するために税金が使われるのではなく、科学館の予算をつかって児童館の運営をしている状態になってしまいます。
こういった感じで、人知れず劣化が進んでいきます。
問題なのは過度なコストカットの影響で自浄作用が全く働くなくなっている点です。
問題なのは過度なコストカットの影響で自浄作用が全く働くなくなっている点です。
地方行政が教育コストを削減しているところはどこも同じような問題を抱えているように思います。
中高生までのお子さんをお持ちの方は、是非とも首都圏の科学館に足を運んでみてください。首都圏の科学館に驚いたなら、残念ながら最寄りの科学館は大いに改善の余地があるのかもしれません。